シルク

シルク (SILK)

シルク (SILK)
シルク (SILK)
シルク (SILK)

糸を吐く虫は多いが、私たちが繭から糸を繰りとって利用している絹糸虫は、糸の量が多くて繰りとりやすい「鱗翅目」に属するものです。

主な絹糸虫は、家蚕(カイコ)と野蚕に大別されます。 カイコは、カイコガ科の昆虫で、屋内で飼育されるところから「家蚕」と呼ばれ、数千年の昔から飼いなされてきました。

風雨、暑さ寒さ、湿気や乾燥から身を守るための精巧なシェルターである繭は、美しい糸でできているばかりに人々の手により極端に家畜化されてしまったのです。

現在、糸を得ているため約50カ国で養蚕(カイコを飼育して繭を生産する)が行われています。


1. 家蚕 (Merbery Silk)

(1) 繭

生産量では、世界第一位、全体の約53% 約25万トンを産しています。
中国の生産地としては、主に揚子江流域の中南部を中心とした各地で養蚕されています。

生産量では、多い順に浙江、四川、江蘇、山東、その他 山西、広東、安キ省 等などです。品質の高いのは、四川、山東、浙江省等です。
養蚕は、通常年4回行われ、第1回目5/1~5/31 第2回目6/15~7/5 第3回目7/15~8/5 第4回目9/1~9/30となり、第1回目及び第4目 が生産量も多く、品質も最適。

養蚕農家は、農業と兼業が多く、一軒当り年間約250㎏程生繭を生産します。
生繭は、一週間放置すると蛾になってしまうので、全て乾燥させる。約250㎏ の生繭を乾燥させると約100㎏の乾繭になります。

(2) 生糸

本来Silkは、フィラメント糸なので紡績法がまだない紀元前より、比較的上質の繭から直接に長繊維を繰糸し(製糸)、生糸として、中国古代交易の主産物でありました。中国の生糸の年間生産量は、約5万トン(内輸出約1万トン)。

品質の高い生糸の主な生産地としては、A産地 浙江、江蘇、B産地 四川、山東、C産地 雲南、山西省が有名です。

日本向け輸出は、関税は掛かりませんが、政府の外郭団体である蚕糸砂糖価格安定事業団が毎年、輸入数量枠を設け、負担金を課して輸入制限をしています。
因みに現在の数量枠は、840トン/年 事業団負担金は、850円/㎏。

通常、製糸は良質な繭を厳選し、6~7個の繭を合わせ、21デニールになるように糸繰りします。 生糸の品質グレードは、繊度の安定制、色合い、光沢等により 6Aを最高に5A、4A、3A、2A、Aと6ランクに区別されます。 

現状の商品市況にあります生糸相場は、4Aを基準にしています。

(3) 絹紡績用原料

生糸として製糸できない繭や、製糸の工程で発生する副産糸(キビソ)は、一旦開毛して短繊維の綿(真綿)にし、梳き揃え(カーディング)、ペニー(毛紡績のトップに相当する中間製品)や、スライバーを経て精紡し、絹紡糸となります。

ペニー (トップ)の生産工程は、通常以下の通り。

煮繭 ➝ 切開 ➝ 洗浄 ➝ 殺菌 ➝ 精練・乾燥 ➝ 混綿 ➝ 開絹・切断➝ 梳綿 (カーディング) ➝ 検綿 (ネップ取り) ➝ 延展 ➝ ペニー (トップ)
2. 柞蚕 (野蚕Tussah Silk)

中国が原産ですが、日本、朝鮮、インド産などがあり、タッサーと総称されています。主として中国とインドで飼育されています。

家蚕に次ぐ絹材料で、その糸は正しくは「柞蚕糸」または「タッサーシルク」と呼ばれます。通常「野蚕糸」として取引されています。天蚕と同じく、クヌギ、コナラ、クリ、カシワ類を好み淡褐色ないし茶褐色の繭を作ります。

柞蚕糸は、色は淡褐色で、絹のような光沢はあるが、染料に対する親和性に欠け、染まりにくいので他繊維と混織にして模様の染め分けなどに用いられます。

主な産地としては、家蚕の産地に比べ、比較的降雨量の少ない中国東北部、現状 遼寧省のみ、中でも蓋州市周辺(以前は黒龍江省、吉林省もあった。)

野蚕の中で柞蚕は、代表的な蚕ではあるが、中国に於ては生産量は家蚕に比べ、極めて少ない。

家蚕は、「桑」の葉を餌に家の中で養蚕するのに対して、柞蚕は、野外で「柞の木(くぬぎの一種)」の葉を餌に生木で養蚕するので、風水害の影響を受けやすく、養蚕できる期間が限られているために生産性が低い。

家蚕では、製糸したものを「生糸」と称するのに対し、柞蚕を製糸したものを「水樔糸」と称する。 また、紡績用の原料としてペニー(トップ)も作られていますが、製造工程は家蚕とほぼ同じです。しかし、家蚕に於るようなはっきりとしたグレード別けや、ブランドは、ないようです。

柞蚕の主な需要用途は、家蚕に比べて繊度が約5~6デニールと太く(家蚕は約2.5~3デニール)、色もベージュまたは茶色ということもあり、衣類品にはあまり使われず、寝装品やシルク絨毯のようなインテリア用としてが、主たるものです。

寝装品の「シルク毛布」や「シルク布団」用原料としては、家蚕より光沢は劣りますが、崇高性がよく「軽さ」を感ずるものとなり、家蚕よりはコストが安くできるメリットが、あります。